「自分や他人の心理を理解するうえで役に立つ本は?」
「最近人の心理に興味を持ちはじめたけど、初心者にも分かりやすい本は?」
人の心理は目に見えないからこそ、理解が難しく、誤解やすれ違いが生まれてしまうことがあります。「なぜあの人はあんなことをするのか」「自分は普通の人とズレているのかな…」--そんな疑問やモヤモヤをきっかけに、心の仕組みを知りたくなる人もいるのではないでしょうか。
そんなときに頼りになるのが精神科医が書いた本。臨床現場で多くの人の悩みに向き合ってきた医師だからこそ、感情や行動の背景などを専門的な視点で分かりやすく解き明かしてくれます。
そこで本記事では実際に読んだ本の中から、精神科医が書いた人気おすすめ本をランキング形式で紹介していきます。本記事を読めば、これまでのモヤモヤ感が解消されるような一冊が見つかるでしょう。
精神科医が書いた人気おすすめ本
- 【1位】『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』岡田尊司
- 【2位】『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』岡田尊司
- 【3位】『自己愛性パーソナリティ障害 正しい理解と治療法』市橋秀夫
【1位】『パーソナリティ障害』岡田尊司

概要・あらすじ
現代人の多くが抱えているといわれるパーソナリティ障害(人格障害)。パーソナリティ障害とは、偏った考え方や行動パターンのために家庭や社会生活に支障をきたした状態。パーソナリティ障害とは何か、なぜ生まれるのかから、主に10タイプに分類されるパーソナリティ障害の①特徴と背景②接し方のコツ③克服のポイントまで解説した一冊。
感想・おすすめポイント
- 主に10タイプに分けられる
- パーソナリティ障害の大きな原因は「親(不在も含む)」
- 境界性パーソナリティ障害は「両極端の間をめまぐるしく変動する」
本書は主に10タイプに分けられるパーソナリティ障害を解説した一冊で、各タイプの章は①特徴と背景②接し方のコツ③克服のポイントで構成されています。とにかく初心者にも分かりやすいのが魅力で、まったく詳しくなくともパーソナリティ障害について体系的に学べます。
そもそもパーソナリティ障害とは偏った考え方や行動パターンにより、家庭・社会生活に支障をきたした状態。主に10タイプに分類され、それぞれの特徴・傾向は以下の通りです。
| パーソナリティ障害 | 特徴・傾向(一部) |
|---|---|
| 境界性パーソナリティ障害※1 | ・人に見捨てられることを強く恐れ、不安を抱いている ・対人関係の変動が激しく、コミュニケーションが安定しない ・気分や感情がめまぐるしく変わり、周囲の人々がついてこられない |
| 自己愛性パーソナリティ障害※2 | ・自分は特別な存在であり、他人よりも優れていると考える ・他人からの過剰な賞賛を常に求め、それが得られないと不機嫌になったり怒ったりする ・他人の感情やニーズを理解したり、寄り添ったりすることができない(しようとしない) |
| 演技性パーソナリティ障害※3 | ・自分が話題の中心になっていないと気が済まない ・注目を集めるために泣いたり、周囲を非難したりする |
| 反社会性パーソナリティ障害※4 | ・自分の行為により、他人がどう思うか、どういう状況になるかを適切に理解できず、平気で傷つけたり騙したりする ・将来の計画を立てられず、衝動的に行動する |
| 妄想性パーソナリティ障害※5 | ・他人に利用されてしまう気がして、仲が良くても個人の情報を教えようとしない ・ふとした言葉に自分をけなしたり脅したりする意味があると考える |
| 失調型パーソナリティ障害※6 | ・偶然の出来事に対して誤った解釈をして、普通でない意味付けをする ・奇妙な信念を持ち、行動に影響を及ぼしている ・誰もいないのに誰かがいるように感じるなど、普通ではない知覚体験がある |
| シゾイドパーソナリティ障害※7 | ・他人との関わりを好まない ・一人で楽しむ趣味ばかりを持つ ・他人との性体験に興味がない |
| 回避性パーソナリティ障害※8 | ・他人に対する批判や嫌悪を強く恐れる ・新しい人間関係の構築を極度に避ける ・人前での自己表現を避ける |
| 依存性パーソナリティ障害※9 | ・些細なことも決断できない ・自分が依存している人の意見に反対できない ・不快な仕事や不条理な要求を飲む |
| 強迫性パーソナリティ障害※10 | ・秩序や完璧主義にとらわれる ・他人に仕事を任せられない ・自分のやり方を他人にも不条理に押しつける |
※1 参考:いちメンタルクリニック
※2 参考:新宿よりそいメンタルクリニック
※3 参考:ブレインクリニック
※4 参考:ブレインクリニック
※5 参考:ブレインクリニック
※6 参考:ブレインクリニック
※7 参考:ブレインクリニック
※8 参考:大阪メンタルクリニック
※9 参考:ブレインクリニック
※10 参考:ブレインクリニック
本書によると、パーソナリティ障害の大きな原因は親(親の不在も含む)で、親が子どもに与えてやれる最も大切なものは自分を大切にする能力。この能力をたっぷり与えられなかった子どもは、さまざまな生きづらさを抱えて生きることになると述べられています。
またさまざまなパーソナリティ障害がある中で、近年急速に市民権を得ているのが境界性パーソナリティ障害。一言でいえば、両極端の間をめまぐるしく変動するのが特徴で、特に気分と対人関係において顕著に見られるとのこと。
不安定性の根底にあるのは深い愛情飢餓感と依存対象に見捨てられまいとする心理で、接し方のコツとしては変わらないことが大切。いいときも悪いときも、できるだけ一定の態度で接することが支えになると述べられています。ちなみに本書にはやりがちな最悪の接し方なども取り上げられています。
全体を通して、パーソナリティ障害に詳しくなくとも理解しやすく、有名人なども含めた具体例が豊富に紹介されているのも嬉しいポイント。またパーソナリティ障害の人への理解を深めるだけでなく、自分の性格的な特徴・傾向を知るうえでも参考になります。
基本情報
| 著者 | 岡田尊司(おかだたかし) |
| タイトル | パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか |
| 出版社 | PHP研究所 |
| 発売日 | 2004/6/16 |
| ページ数 | 298ページ |
| ジャンル | ノンフィクション |
| 受賞・候補歴 | – |
| メディアミックス | – |
| おすすめ度 | ★★★★☆(SSランク) |
| 楽天 | https://a.r10.to/hk7gDU |
| Amazon | https://amzn.to/4n1dlp8 |
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【2位】『生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害』岡田尊司

概要・あらすじ
恥をかくのが怖くてチャレンジできない。人に嫌われていると思い込む。これらの特徴を持つのが回避性パーソナリティ障害。自尊心が傷つくことへの強烈な不安・心配ゆえに対人関係や社交の場などを避けてしまう。そんな人が能動的な日々を過ごすためのヒントは何か。回避性パーソナリティ障害の特徴や克服する方法などを解説した一冊。
感想・おすすめポイント
- 大きな特徴は「他人の批判や拒否に敏感」
- 典型的な愛着スタイルは「恐れ・回避型」
- 対策は「ありのままの自分をさらけ出す」
本書は回避性パーソナリティ障害の特徴や原因、対策などを解説した一冊で、回避性パーソナリティ障害とは拒絶や批判、屈辱を極度に恐れるあまり、社会的状況や人間関係を避けてしまう精神疾患※です。
※参考:MSD Manuals
本書によると、第一の大きな特徴は他人の批判や拒否に敏感であることで、対人関係において非常に傷つきやすく、特に拒否されたり否定的なことを言われたりすることに極めて敏感と指摘しています。
他人に認められたいという気持ちがありながらも、自分に自信が持てず、また否定的なことを言われるのではないかと恐れており、結果的に対人関係や社交の場を避けてしまう。回避性の人が親密な関係を持てるのは相手が自分に対して明らかに関心や好意を示し、熱心に何度も接近してくれたときだけと述べられています。
回避性パーソナリティ障害のベースにある、最も典型的な愛着スタイルは「恐れ・回避型」。恐れ・回避型愛着スタイルの特徴は自分にも他者にも否定的なイメージを抱き、自分のような嫌われ者は冷たい他人が優しくしてくれるはずがないと思い込み、本当は愛されたいのに冷たい仕打ちが怖くて、相手に近寄れないというジレンマを持つとのこと。
回避性パーソナリティ障害を克服する方法の一つが、ありのままの自分をさらけ出すこと。回避性の人は自分は恥ずかしい存在という思い込みから、等身大の自分を見せず、自分の内面を隠してしまう。隠せば隠すほど、知られることが恥ずかしくなり、消極的な生き方になっていく。こうした悪循環を脱するために、自分を少しずつ出していくことを推奨しています。
全体を通して、回避性パーソナリティ障害の特徴や心理構造が分かりやすく、専門的な知識がなくとも理解しやすい内容です。具体的な事例や実践的なヒントが多く紹介されており、実生活でのコミュニケーションにも参考になりますね。
なお、本書には他にも回避性の特徴が見られる著名人や最近回避性の傾向を持つ若者が増えた要因、回避性パーソナリティ障害の遺伝要因と環境要因、回避性の人とうまく付き合う方法、回避性の人にとっての適職などが紹介されています。
基本情報
| 著者 | 岡田尊司(おかだたかし) |
| タイトル | 生きるのが面倒くさい人 回避性パーソナリティ障害 |
| 出版社 | 朝日新聞出版 |
| 発売日 | 2016/6/13 |
| ページ数 | 308ページ |
| ジャンル | ノンフィクション |
| 受賞・候補歴 | – |
| メディアミックス | – |
| おすすめ度 | ★★★☆☆(Sランク) |
| 楽天 | https://a.r10.to/hXc6WS |
| Amazon | https://amzn.to/4o9b6Sl |
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【3位】『自己愛性パーソナリティ障害 正しい理解と治療法』市橋秀夫

概要・あらすじ
「敏感すぎる」「傷つきやすい」「自分を好きになれない」といった特徴を持つ自己愛性パーソナリティ障害。肥大化した自尊心に振り回される病で、うつ病やDV、引きこもり・不登校などの現象を引き起こしやすい。周囲に限らず、本人も自らの障害の問題点に気づける一冊。
感想・おすすめポイント
- 引き起こしがちな7つの現象
- 周囲の印象とは異なる特性を持つ
- 周囲が対応する際に守るべき8つのポイント
本書は自己愛性パーソナリティ障害の特性や考え方、行動パターン、思考パターンなどを解説した一冊です。自己愛性パーソナリティ障害は肥大化した自尊心に振り回される病で、実生活の中でさまざまなトラブルを引き起こします。
特に引き起こしがちな現象は以下の通りで、こうした現象の裏に自尊心の問題があることに、本人や周囲だけでなく医師さえも気づきにくいそうです。根本原因を取り除けないため、頻繫にトラブルをくり返してしまいます。
- 摂食障害
- 非定型うつ※
- 引きこもり・不登校
- 強迫性障害(不潔恐怖や醜形恐怖など)
- DV(ドメスティック・バイオレンス)
- ストーカー
- クレーマー
※従来のうつ病とは異なる症状が出るタイプ。気分の反応性や拒絶過敏性、過食、過眠などの特徴を持つ
※参考:品川メンタルクリニック
また自己愛性パーソナリティー障害と聞くと、「自分大好き」「うぬぼれが強い」と思われがちですが、実際には以下の特性を持っているとのこと。
- 自分のことが好きになれない
- 他人を信用できない
- 人間関係は常に勝ち負けになる
- 自分が自分以上でないといけないという強迫観念を持っている
- 他人の成功に対して、嫉妬と羨望の感情が収まらない
- 自分が特別な存在であることをさりげなく、あるいはあからさまに示したがる
- うまくいっているときには頑張れるが、思い通りにいかなくなると努力を続けられなくなる
- 挫折に弱く、立ち直ることが困難
- 批判されたり叱責されたりすることが極度に苦手
- 自分がどう見られているかばかり気にする
- 自分が賞賛されているイメージに耽溺する
特に人間関係のパターンが印象的で、他人とは対等な関係になりにくく競争相手になってしまう。人との関係は基本的に「見下すか」「見下されるか」の2択で、家族だけは唯一自分の延長線上に捉えることが多いようです。ちなみに本書には自己愛性パーソナリティー障害の対人意識が分かる、ある政治家の言葉も紹介されています。
自己愛性パーソナリティー障害の人との付き合いは難しいですが、以下の8つのポイントを念頭において対応することが大切であるようです。
- 気持ちを分かってあげる
- 目線を本人と同じ高さに
- 言い訳をしない
- 分かろうとする態度を示す
- お役人的な態度、硬直的な態度を取らない
- 支配的な態度、威圧的な態度を取らない
- こちらが間違ったときにはきちんと謝罪する
- 規則優先な対応は避けるが、原則は譲らない
全体を通して、自己愛性パーソナリティー障害の人に抱いていたイメージとは異なる姿を感じられるのが新鮮です。どれだけ自分が好きなのかと思っている人は、本書を読むと見方が変わるかもしれません。また全体的にイラストが多く使われているため、文章が苦手でも理解しやすいのも嬉しいポイントです。
なお、本書には他にも自己愛性パーソナリティー障害の原因や背景に加え、病理の構造や特有の考え方、気づきのレッスン、対人関係でやりがちなことなどが紹介されています。
基本情報
| 著者 | 市橋秀夫(いちはしひでお) |
| タイトル | 心のお医者さんに聞いてみよう 自己愛性パーソナリティ障害 正しい理解と治療法 |
| 出版社 | PHP研究所 |
| 発売日 | 2018/8/7 |
| ページ数 | 99ページ |
| ジャンル | ノンフィクション |
| 受賞・候補歴 | – |
| メディアミックス | – |
| おすすめ度 | ★★★☆☆(Sランク) |
| 楽天 | https://a.r10.to/hg8rFA |
| Amazon | https://amzn.to/46FeOeT |
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まとめ
精神科医が書いた本は、長年の臨床経験をもとにしたリアルな人間理解が魅力です。
多くの人の悩みに向き合ってきたからこそ、感情や行動の背景にある心の動きを、専門的な知識と実体験の両面から分かりやすく伝えてくれます。
精神科医が書いた本を読むことで、自分や他人の感情の仕組みを客観的に捉えられるようになり、これまで何となくモヤモヤとしていた部分が晴れていくでしょう。
