レコードオタク・マニアである鈴木一郎さん(30代男性)が、これまで洋楽レコードにかけてきたお金は約600万円!また、15歳の頃から買い集めてきたレコードの枚数は計3,000~4,000枚!
なぜそんなに洋楽レコードにハマったのか。洋楽レコードにはどんな魅力があるのか。そもそもレコードとは何か。今回のインタビューでは、そうした点などから鈴木さんに洋楽レコードについて伺いました。
プロフィール
- お名前:鈴木一郎さん(仮名)
- ご年齢:30代(男性)
- 何のオタク・マニアか:洋楽レコード(の収集)
- オタク・マニア歴:約20年
- これまでに使った金額:約600万円
レコードは大きさなどにより分けられる
――そもそもレコードとは?
レコードは主に塩化ビニールなどでできた音声記録のメディアです。基本的にCDよりも二回りぐらい大きくて黒い円盤のことです。
■参考動画(【オカネのヒミツ】再熱「レコード」の魅力!超高級プレイヤーも登場 中古買取も高値で ノスタルジーだけじゃない若者もハマるワケ 【報道ランナー】)
――レコードにはどんな種類があるのですか?
まずは大きさでいうと、主に7インチ(直径17cm程度)と12インチ(直径30cm程度)のタイプがあります。7インチはCDよりも少し大きいほどのサイズで、12インチは皆さんが想像されるだろうレコード(のサイズ)です。
一般的に12インチのほうが音質がいい傾向にあり、クラブでDJとかをやる人は12インチを使うことが多いです。レコードが小さいと音を入れるときに少し雑になってしまいますので…。あと、12インチのほうが耐久性がありますね。
――耐久性?
レコードは基本的に直射日光に弱いです。直射日光を長時間浴びると、レコードが変形して音質が劣化してしまうことがあります。
ただ、12インチのレコードは比較的大きなサイズで、しっかりとした作りになっているため、多少のダメージならカバーできることが多いです。もともと音質がクリアでいいので、ある程度のダメージなら音質の悪化が目立ちにくいという特性がありますね。
――レコードは直射日光に弱いのですね。
たとえば、窓の近くなどに置いておくと、ちょっとずつ変形してしまい、場合によってはぐにゃっと曲がってしまいます。レコードは基本的に塩化ビニールでできていますので。
レコードが曲がると、レコードプレーヤーの針が飛んでしまいます。いわゆる、針飛び※です。レコードはレコードプレーヤーの針を落とすことにより音が流れていますが、レコードが曲がっていると針が跳ねるように飛んでしまうのです。
※レコードの表面に傷や汚れ、ホコリなどがあることで、針が盤面から浮いて音が途切れる現象
また針飛びはレコードの傷なども原因になるので、私はレコードを保護するカバーに入れて保管しています。あと、レコードは熱や高温が苦手なので、大体15~25℃ぐらいの温度で保管していますね。といっても、部屋にエアコンをつけて常時管理しているわけではありませんが…。
ただ、やっぱりレコードを雑に扱うと音質が悪くなってしまうので、保管状況には結構気を使っています。
――話が少し戻りますが、大きさ以外でいうとどんな種類がありますか?
正直これはあまり詳しくないのですが、SP(Standard Play)盤※1やLP(Long Play)盤という種類もあります。
※1:回転数:78回転/分。収録時間:4~5分程度。1960年代に生産終了
※2:回転数:33回転/分。収録時間:30分程度
SP盤はむかしのレコードタイプで、ジャンルでいうとジャズやクラシック音楽、戦後に流行っていた民謡などが多いです。また主にシェラック(樹脂)製で、少し重くて割れやすいという特徴があります。
LP盤は先ほど触れた12インチに該当する新しいタイプで、SP盤よりも音質がクリアです。また主に塩化ビニールでできているので、SP盤よりも軽くて耐久性に優れています。
現在はLP盤が主流で、むかしはSP盤だったという理解でいいかと思いますね。ちなみに、私が持っているレコードはすべてLP盤です。
――話が少し変わりますが、そもそもレコードはどのように聴くのですか?
レコードは基本的にレコードプレーヤーに載せて、その上にレコードプレーヤーの針を落として聴きます。実はレコードには「音溝」※と呼ばれる溝が掘られていて、この溝に針が触れると溝に沿って針が細かく動きます(=振動します)。その振動を電気信号に変えて音にしているのです。
※レコードや映画フィルムなどの音声情報を記録した溝
少し余談ですが、レコーダープレーヤーの針にはダイヤモンド(主に工業用の人工ダイヤモンド)などの非常に硬い素材が使われています。針が硬いほうがしっかりと音を読み取れて音質がよくなるからです。表現が難しいですが、針が硬いと低音もしっかりと聴こえるようになるといったイメージです。
また針は劣化するので定期的に変える必要があり、私は半年に一回程度の頻度で変えています。針が劣化すると音質が悪くなるし、最悪レコードを傷つけてしまうので…。
ちなみに針の値段は意外と高くて、普通に1個3,000円とかしますし、高いものだと1万円以上することもあります。
――やっぱり、レコードプレーヤーも音質などの点から大切なのですね。
はい、レコードが好きな人はレコードプレーヤーだけでなく、「ミキサー(DJミキサー)」※1と呼ばれる機器も持っているケースが多いかと思います。DJ※2の人がよく使っている機器というとイメージしやすいかもしれません。
※1:複数の音源をミックスして音量やエフェクト(=音に加工を施して変化を加える処理)などを調整するための機器
※2:「Disk Jockey(ディスク・ジョッキー)」の略。主にクラブなどのイベントで音楽を流して場を楽しませる人
■参考動画(【小さいは正義】GEMINIから2万円以下のDJミキサー3種を徹底紹介&比較!(MXR-01BT / MM1BT / MM1))
ミキサーもあると、より多彩な音を楽しめるようになるので、私はレコードプレーヤーとセットで持っています。
――先ほども少し触れましたが、レコードはどのように保管していますか?
まずは直射日光や熱・高温を避けることです。
あとは個人的な嗜好になるかもしれませんが、私にはレコードを綺麗に保管してあげたいという気持ちがあるので、平積みではなく垂直に立てる縦置きにしています。平積みにすると、下に置いたレコードに負荷がかかって歪んでしまいますので…。
洋楽レコードにハマったきっかけは「DJ」
――洋楽レコードにハマったきっかけは?
最初はレコードというよりもDJにハマりました。
というのも、私はもともと勉強が少し苦手で、中学・高校のときは勉強があまりできませんでした。それで周りとはちょっと違うところで、上位を目指したいなあと思いまして…(笑)
実家は田舎にありましたが、私が15歳(中学三年生)ぐらいの頃、周りに友だちのお兄ちゃんとかでDJやダンスをやっている人が多くいました。そこでDJという存在を初めて知りましたね。
今でこそDJはパソコンとかでもできますが、当時はレコードが主流でしたので、DJをやりはじめる過程でレコードも集めるようになりました。
――周りにはクラブとかがあったのですか?
いえ、やっぱり田舎だったのでクラブもなかったです。ただ、知り合いのライブハウスとか喫茶店を貸し切って、ちょっとした音楽イベントなどを開催していました。
ちなみに自分は周りがやっていた音楽イベントを見に行ったことをきっかけに、DJは面白そうだなと思ってやりはじめました。
――DJは主にどんなことをするのですか?
クラブをイメージすると分かりやすいかもしれませんが、DJはひたすら音楽を流し続けて来場者を楽しませます。とにかく音楽を流し続けないといけないんですよ。普通なら一曲終わったら次の曲を準備する時間がありますが、DJはずっと音楽を流し続けないといけないんです。
なので、DJが使うターンテーブル※には、レコードを置く場所が2つあります。片方で曲を流している間に、もう片方では次にかける曲を準備します。
※レコード盤を回転させ、音楽を流すための機器
たとえば、Aという曲が終わった後、Bという曲にスムーズに切り替えるために、次の曲の位置やタイミングなどを合わせておくのです。さらにBからCという曲に違和感なく移行するために、音のバランスや流れなどを調整していきます。
このようにDJは曲をうまくつなげて、常に音楽が途切れないようにしているんです。
■参考動画(【ターンテーブル革命!】Pioneer DJ PLX-CRSS12を徹底解説!(前編))
音はターンテーブルの真ん中にあるミキサーという機器で調整します。ミキサーには「右の曲を流す」「2つの曲を同時に少しだけ流す」などといった操作ができるボタンやつまみがあります。もし2つの曲を同時に流したら、音がぶつかってうるさくなったり、違和感が生まれたりしてしまいます。
だから、DJは曲の高音や低音、音量などを慎重に調整し、スムーズに次の曲に切り替えたり、うまくミックスしたりするんです。
来場者に違和感なく気持ちよく過ごしてもらうためにも、実は結構細かな配慮が必要になるんですよね。
――DJをやられていた時期は?今でもやっているのですか?
いえ、今はもうやっていませんが、特に20~28歳ぐらいのときはがっつりとやっていました。私はクラブの専属とかではありませんでしたが、普通に会社員として働きながらバイトに近い感じで、金曜日とか土日祝日に夜10時から朝6時までやっていましたね(笑)
DJから離れて10年ぐらい経ちますが、レコードは今でも独特な音質が好きでずっと集めています。
――レコードの中でも洋楽にハマったきっかけは?
本当にシンプルな理由で、英語はかっこいいなあと思ったからです(笑)周りの同級生は日本語の曲をよく歌っていましたが、私は「英語のほうがかっこいいじゃん!」と思って、当時は意味もあまり分からずによく聴いていました。
――洋楽レコードにハマってから変わったことはありますか?
特に学生時代はレコード仲間というか、交友関係が圧倒的に広がりました。
当時レコードが好きな人はあまり多くなかったのですが、逆に好きな人がいると他県まで一緒にライブに行ったり、遠方の人とも仲良くなったりしました。学生時代だとどうしても学校とか部活がメインになりますけど、そういう枠を超えて遠方の人と親しくなれたのは大きかったですね。
また年代の違う人とも音楽の話で仲良くなったこともあり、今でもすごくいい思い出として残っています。
今はさすがに結婚して時間的な制約もあるので、なかなか難しいところがありますが、誰かがむかし自分がハマっていた曲をTwitter(X)などにアップしていたら「いいね」とかを押していますね。
レコードは「1曲あたり1,000円ぐらいもする」
――オタク・マニア歴は?また、主にどんな活動をしていますか?
オタク・マニア歴は中学三年生の頃からなので約20年です。DJをやりはじめた時期と完全に被っていて、レコードを持っていれば持っているほど、DJでかける曲の幅も広がりますからね。
現在の主な活動としては、やっぱり洋楽レコードを買って聴くことです。
――これまで洋楽レコードに使ってきたお金(金額)は?
これまで使ってきたお金は約600万円です。レコードは1枚2,000円ぐらいするので、結構かかってしまいます…。
またレコードには表面と裏面がありますが、実は大半が表面に1曲、裏面に1曲しかありません。つまり1枚のレコードに計2曲しかないので、1曲あたり1,000円ぐらいもするのです。今の音楽は1曲150円とか、曲によっては無料で聴けますが、レコードは本当にコスパが悪いんですよ(笑)そのレコードを月2~3万円程度、枚数でいうと10~15枚程度買い続けてきました。
他にもレコードプレーヤーの針やレコードを収納する棚に、レコードをメンテナンスするためのお掃除グッズなどもあるので、それらも含めて計600万円程度使ってきました。
――たしかに計2曲しかないと、コスパが少し悪いような気が…。
しかも、私は同じレコードでも3枚買うことがあります。一枚は現場で使う用、もう一枚は家で一人で聴く用、残りの一枚は家に飾る用です。レコードの表紙がかっこいいと、つい買ってしまうこともありますね。いわゆる、ジャケ買いです。
あと、自分が何を持っているかを覚えていないこともあり、実は持っていたレコードを買ってしまったこともあります(笑)
また貴重なレコードになると、オークションなどで1枚30,000円とかします。数年前の話ですが、私は30,000円のレコードを買ったこともありますね。それも2曲しか入っていないので、1曲あたり15,000円です(笑)
特にむかしはTwitter(X)とかInstagramなどの情報源もなく、レアなレコードがオークションなどに出ると、値段がすごい急騰しているところがありましたね。
――現在レコードは何枚くらい持っているのですか?
レコードは3,000~4,000枚ぐらい持っています。6畳の部屋の半分ぐらいがレコードで埋まっていますね(笑)もはや音楽部屋のようになっていて、CDとかも合わせると4,000~5,000枚ぐらいあるかと思います。
――えっ、3,000~4,000枚…!?
はい、15歳の頃から買い集めたレコードがすべてあります。
――「すべて」ということは売ってもいないのですか?
はい、一枚も売っていません。やっぱり、いろいろと思い出があるので捨てられないんです。
お金があまりないときにやりくりして買った思い出とかもあるので、収納スペースがもったいないかなあとは思いますけど、なかなか簡単に売れないところがありまして…。
なので、妻は理解してくれていますが、私の両親からは「いつまであんなのを置いてるんだ…」とか言われますね…(笑)
――レコードプレーヤーはいくらくらいするのですか?
私が使っているレコードプレーヤーは約10万円です。当時渋谷のDJ専門店で買った覚えがありますが、スピーカーなどもセットで10万円程度かかりました。高いレコードプレーヤーだと数十万円するものもあります。
――洋楽レコードはどこで購入できるのですか?
むかしはレコードショップが多くありまして、そこで買っていました。私は東京から離れた場所に住んでいたので、数か月に1回渋谷とかに行って買っていましたね。今はネットがメインで、店舗で買うことは少なくなってしまいました。
――おすすめのレコードショップは?
一つが「バナナレコード」で、黄色い建物が特徴的です。東京には店舗がありませんが、愛知や大阪、京都などにあります。他には「ディスクユニオン」で、普通にCDとかも売っていますが、当時はレコードコーナーもありました。
私が大学時代によく行っていたのが渋谷の「CISCO(シスコ)」ですが、今は閉店・倒産してしまいました。あとは「Manhattan Records(マンハッタンレコード)」とかですね。
当時は中古も含めてレコードショップが他にもたくさんあったのですが、むかし過ぎて店名を忘れてしまいました…。
印象的なエピソードは「奇跡的な出会い&ブート盤」
――洋楽レコードに関する印象的なエピソードは?
まず、音楽には「BPM(Beats Per Minute)」※と呼ばれる、曲の速さ(テンポ)を測るための単位があります。むかしのレコードには真ん中辺りにBPMが書いてあり、そのBPMと一緒に名前が書いてあることがよくありました。
※「1分あたりの拍数」を意味する音楽用語
――名前?
はい、中古レコードなので、もともと持っていた人の名前です。
むかしよく行っていた東京のレコード屋さんで、ある女性の名前が書かれているレコードがちらほら置いてありました。彼女の名前が書いてあるレコードは、自分の趣味にドンピシャなレコードばかりだったんです。
それで「彼女はどんな人なのだろう?」と気になりながら、彼女の名前の入ったレコードを買いはじめてから3~4年経った頃、都内のバーでDJをしていたら「これ、私のレコードだ」と話しかけられたんです。
――もしかして、その女性が?
はい、彼女がたまたまお客さんとして来ていたのです。もう……すごい確率というか、奇跡的な出会いだなと…!
ちょっといい話ではないですけど、まさか会えるとは思っていなかったので、すごく感動しましたね。これもレコードならではの縁かな、と思います。
――他に印象的なエピソードはありますか?
これは悲しい気持ちになった話ですが、むかし30,000円もするレコードを思い切って買いました。ただ、後に誰かがその音源でも入手したのか、勝手にレコードとして売っていたのです。いわゆる、ブート盤(海賊盤)※です。
※権利者の許諾を得ずに製造・流通された非正規品
せっかく30,000円もかけて買ったのに、まったく同じ曲が数年後に2,000円とかで売られていて、一体何だったのだろうと思わされました…。正直ちょっとやってられないという気持ちに…。
今はもうないかと思いますけど、むかしは音楽関係者がアメリカだったらアメリカまで行って、そこでレーベルと契約して日本に流通させることが主流でした。なので、その過程で個人が音源を盗んで勝手に売ってしまおうとする人がいたのです。
おすすめの洋楽レコードは「2パック(トゥーパック)」
――おすすめの洋楽レコードは(できれば3つほど)?
洋楽レコードというよりもアーティストになりますが、私が好きなアーティストは2パック(トゥーパック)というアメリカのラッパーです。彼の歌詞とか曲調(テンポ)がすごく好きですね。
もともと彼は貧困層出身で、当時は激しい黒人差別とかもあったので、「差別に立ち向かっていくぞ!」「世の中はなんて不平等なんだ!」のような、社会性の強いメッセージを歌詞にしていました。ちなみに、彼のご両親も黒人解放運動※に傾倒していたようです。
※白人と同等の権利を保障することを目的に、アメリカで行われた公民権運動
特に好きな曲は『Changes』で、まさに社会の不公平さを訴えたような曲です。
次に『Dear Mama』で、母親への愛を歌った曲です。
最後が『California Love』で、地元・カリフォルニアへの愛を込めて歌った曲です。
こちらが個人的なベスト3で、彼の地元はロサンゼルスですが、彼のことが好きすぎて住んでいたというロサンゼルスまで行ったことがあります(笑)彼は25歳のときに銃撃されて亡くなっていますが、もし生きていたらもっと曲を聴けたのになあと思いますね。
――わざわざロサンゼルスまで…!?だいぶ好きですね。
あと、これは話が少し逸れてしまうかもしれませんが、レコードの文化的な背景にネタ使い(サンプリング)というのがあります。ネタ使いはむかしの曲(メロディー)の一部をパクって使うことです。たとえば、あの歌のメロディーを使いつつ、ドラムの音を少し変えて曲を作るのです。
これだけ聞くと「盗作じゃん!」と思うかもしれませんけど、むしろリスペクトがあるからこそ使っているのです。
先ほど挙げた2パックの『Changes』も、実はパクっている曲なのです。また、2パックと同じようにパクっている人が他にもいるのです。すると、「あっ、あの人も同じ元ネタを使ってる!」という発見があり、それでテンションが上がってその曲も買うことがあります。なので、もう無限に購買意欲をそそられるようなところがありますよ(笑)
――おすすめのレコードプレイヤーは?
レコーダープレーヤーは「TECHNICS(テクニクス)」やVestax(べスタスク)が有名ですね。
テクニクスはパナソニックが製造しているブランドで、クラブとかにもよく置かれていました。
■参考動画(TechnicsダイレクトドライブターンテーブルシステムSL-1200GR2【テクニクス公式】)
べスタスクはテクニクスよりも安定性に優れていて、いろいろと思い出も詰まっているので、私は15歳の頃からずっとべスタスクを使っています。ただ、現在べスタスクは中古でしか買えない状況ですね。
あと、レコードアーム(トーンアーム)※が結構違っていて、テクニクスは少し曲がっていて、ベスタクスは真っ直ぐになっています。なので、人にもよるかもしれませんけど、べスタスクのほうが安定性が強いと思いますね。
※レコードの音溝に針先を落として音声信号を読み取る部品
――洋楽レコードに関するおすすめの本とかYouTubeはありますか?
YouTubeでいうと、東京で活躍している「DJ HASEBE」という大ベテランのDJさんがおすすめです。YouTubeでは、実際にDJをやっているところを上げていてよく聴いています。
あと、渡辺志保さんという女性はヒップホップなどについてすごく詳しくて、ラジオなどをよく聞いていますね。ちなみに執筆業とかもやられています。
洋楽レコードの魅力は「古ぼけたレトロな感じ」
――洋楽レコードの魅力は?
洋楽レコードは音質の(いい意味での)チープさというか、古ぼけたレトロな感じが魅力だと思います。
たしかに今の音楽は音が洗練されていていいですが、洋楽レコードにはレトロだけど音質に深みがあるところもありますし、どの針を使うかによって音質が少し変わるのも魅力です。
また先ほど話した女性の名前が書いてあった話で、むかし持っていた人はどんな人なのだろうなどと想像できるのも魅力の一つかなと思います。
――洋楽レコードはどんな人におすすめ?
やっぱり探求心の強い人におすすめしたいです。
というのも、レコードには誰が作った曲か、どの年代で作られたのかなどが書かれている場合があります。また元ネタは何を使っているのかなども含めて、そうしたところを勉強しながら探り当てていくことが魅力だし、そういうことを突き止めていけるような探求心のある人はハマるかもしれません。
別に音符が読めるとか、本格的なセンスはあまり関係ないと思っていて、「この曲のあれは何だ」などと探求していくことに面白さがあると思います。レコードにはプロデューサーの名前なども書かれていて、「えっ、あれとあれはプロデューサーが一緒じゃん!」といった発見もありますしね。
洋楽レコードは「コスパが悪い分、本当に考える」
――最後に、洋楽レコードについて知らない人に伝えたいことは?
先ほど申し上げた通り、(洋楽)レコードはコスパが悪いです。ただ、コスパが悪い分、自分が本当に好きな音楽は何だろうと考えながら買うんですよね。
今の音楽は無料とか150円程度で聴けるけど、その分消耗品になっているような気がします。一方で、レコードは1曲1,000円ぐらいしますから、自分の感性に本当に触れるものは何だろうと突き詰めながら買えるのは面白いポイントかなと思います。時代とは逆行しているかもしれませんけど…。
またいろいろと考えながら買うことで、とても温かい思い出ができるところもあります。もちろん今の音楽にも好きなところがありますけど、やっぱり簡単に手に入ってしまうからこそ、あまり考えずにどんどんと次から次へといった感じになっているような気がします。
あと、ネタ元や文化的な背景などを調べることにより発見があるし、ただ単に聴いて終わりではない面白さもあるのかなあ、と…。うまく表現できませんが、しっかりとお金をかけて楽しむことも悪くないと思いますね。