長編小説

第16話「地獄の焼きそば作り」

 違和感はなくなってきている。十月がはじまったばかりなのに身震いするほどの寒さがあるほうが疑問だった。まだ冬ではないのに、と何度か嘆いた。 「日曜日の会場すごい遠いよね?」と秋穂が弁当を開けてから訊いてくる。 「ああ、明後日の...
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第15話「どうせバカにしている」

 蝉はいまだに鳴き続けていた。教室の窓を開けると、まだ秋風よりも蝉のほうが主役だった。  制服も夏休み前とほとんど変わらず、女子でもセーターとか、カーディガンを着ている人は少なかった。  二学期がはじまってからすぐにくじ引きの...
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第14話「ジェットコースターのような日々」

 ちょっとしたジェットコースターのようだった。  目に映る景色は次から次へと変わっていくけど、それを楽しんでいる余裕はまったくといってない。夏休みも知らぬ間に終わったような感覚だった。  七月の半ばが過ぎた頃に意を決して相談す...
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第13話「最悪の夏休み」(中編)

 太陽はまだ夏のように燦々と照りつけていた。  空気は水分を欲しているかのように乾いていたし、花が咲いている辺りは地割れが起きているところもあった。少し強めの風が吹くと、砂ぼこりも襲ってくる。  昨日から授業がはじまったものの...
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第12話「終業式」

 下駄箱に行くと、もわっとした空気が押し寄せてきた。  むかし理科で習ったのでいうと、今が一番暑い時間だったような気がする。たしか十二時ではなかった。ただ、その理由はまったくといって覚えていなかった。 「いやあ、喋りすぎたな」...
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第11話「母に噓をついた日」

 案の定、最初から最後まで一人だった。家を出る際に「いってらっしゃい」と言われて、その次に話しかけられたのは「ただいま」だ。その間は、誰とも喋らなかった。  といっても休日では珍しいわけでもなく、むしろよくあるほうだった。ずっと家に...
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第10話「その後の反響」

 応援合戦の反響は予想以上に大きく、いまだに教室で話題となっていた。  優勝こそはできなかったものの、友だちは「絶対に緑組のほうがよかったよ」と言ってくれたし、秋穂からも「すごくよかったよ!」と小さく拍手された。  「ありがと...
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第9話「普通」

「何か普通って感じがしたよ、正直」  その言葉は心の中に彫られたかのように残っていた。最も聞きたくない感想だったかもしれない。  これを言ったのは拓だが、彼に怒っているわけではなかった。むしろ貴重だ。彼は意外にはっきりと言って...
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第8話「体育祭当日」

 体育祭当日、台風が過ぎ去った後のように晴れ渡っていた。夏との違いは蝉がいるかどうかというくらいだ。  校長が開会式で天気について話すだろうと思ったら、案の定「みなさんの日頃の行いがいいので、こんなに晴れてくれたのでしょう!」と開口...
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第7話「テスト返却」

 今週、梅雨入りが発表された。今日は空の思惑通りかのように雨となり、校庭は小さな湖のようになっていた。  上から降り注いでいる雨は、あまりにも早すぎて一本の線のようにも見えた。その線は水面とぶつかり、至るところで小さな波紋を生じさせ...
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第6話「自分の手なのに分からない」

 チャイムの音にはっと起こされて、目を開けて頭を起こそうとしたけど、ちょっとした違和感があった。その体勢のまま左指で口元に触れてみると、やっぱりよだれだった。  手の平をハンカチのようにして拭ったとき、日直の「起立!」という声が聞こ...
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第5話「今日は麻里がいない」

 放課後、教室の前方にある掲示板の前には人だかりができていた。  普段は先生がよほど口酸っぱく言ったり、提出物の締切期限を過ぎたりしていない限り、誰も見向きもしないにもかかわらず、体育祭のリレーの選手や百メートル競走の対戦相手が掲示...
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第4話「長すぎる休憩時間」

 曜日とかの関係で短かったゴールデンウィークも終わり、二年三組がはじまってから一か月が過ぎようとしていた。  どんどんとグループができはじめている中で、自分だけが氷のように浮いているような感覚だった。  でも今は、まだマシなほ...
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第3話「アイドルグループ」

 やっぱり、授業時間は大切だ。  授業中なら立ち歩くやつもいないし、三組には騒ぎ立てるようなやつもいない。部屋に一人でいるときとたいして変わらないけど、他人に囲まれている今のほうが集中できた。  浩太は鼻と上唇でシャーペンを挟...
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第2話「月とすっぽん」

 シャーペンはくつろぐように横になっていて、ノートは半開きのままぐっすりと寝ていた。  岡本おかもと麻里まりは一応黒板のほうに顔を向けていたが、前から二列目にいる涼のほうを何となく見ていた。彼はシャーペンを持って板書を写しているよう...
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第1話「いつもの朝練」(前編)

 周りには、誰一人としていなかった。空気はほとんど存在を消すかのように澄んでいて、地面では二羽のすずめが跳ねながら移動している。  関谷せきや涼りょうはのんびりと歩いていた。ただ単に朝練のためだけではなく、この時間を楽しみに登校して...
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プロローグ「西北高校二年三組」

 そのとき、チャイムが鳴った。朝礼五分前のお知らせだ。  本条ほんじょう紗子さえこはパソコン作業をやめて、椅子に座りながら小さく伸びをした。その後は両肩をほぐすために首を動かしながら、朝礼前に行われる事務連絡を静かに待った。 ...
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【全46話】小説『チャイム』概要・あらすじ【男女四人が織りなす青春ストーリー】

概要・あらすじ  四月の春、西北せいほく高校ではクラス分けが行われ、二年三組のメンバーが発表された。担任は、本条ほんじょう紗子さえこ。主人公は四人の生徒――真面目でストイックな関谷せきや涼りょう、周りから愛されて頼りにされる岡本おか...
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